Founderからのメッセージ
おはようございます、こんにちは、こんばんは。
今これを読んでいるあなたが、どこの国に住む人なのか分からないので、こう挨拶させてもらった。僕の名前は亀井智英。このTokyo Otaku ModeのFounderだ。
今回、僕らが運営するTokyo Otaku Modeについて皆に知ってもらおうと思い立ち、このページを作った。Tokyo Otaku Mode Shopを始めるにあたって、僕たちTokyo Otaku Modeがどんな想いや意志をもってサービスを展開をしているのか、伝えたいと思ったからだ。「Tokyo Otaku Modeがいつ、なぜ始まったのか」「海外へサービスを展開する理由」「Tokyo Otaku Mode Shopを通じてめざしていること」。それらについて、僕の言葉を皆に直接伝えさせてほしい。
Tokyo Otaku Modeができる前に芽生えたもの
40.1mの津波、というものを皆は目にしたことがあるかな?
2011年3月10日、僕は広告会社で働いていて、仕事で福島県に出張していた。「東北」という日本の北に位置するエリアだ。仕事は、思ったより早く終わった。僕は新幹線に乗り込んで、車窓から東北の景色を眺め、少し眠った。翌日にはもう、会社のオフィスで打ち合わせに出席していた。何もかもいつもどおりだった。
そのとき、東日本大震災が起こった。
物が棚から落ち、悲鳴があがるほどの強い揺れ。地面はトランポリンのマットのように柔らかく、グニャグニャになった。平静を保っていたが、足の裏がチリチリ焼けるような、そんな感じがして怖かった。
揺れが収まった後にTVをつけてみると、アナウンサーが、「東北を震源地としたマグニチュード8.8の大型地震が発生しました」「命を守るために早く逃げてください」と注意を呼びかけていた。激しい揺れと津波の影響で、死者や行方不明者が続出。空中へ高く舞い昇る津波が町を飲み込んでいく。そこには僕が昨日までいた町の姿もあった。
出張先で会ったクライアントのワイシャツの染み、ホテルにいた従業員男性の笑顔、潮風に吹きさらされた赤い屋根瓦、駅まで乗ったタクシーのタイヤがカーブできしむ音。町で見聞きした記憶の断片が脳裏によみがえってきた。そしてそのほとんどが、地震と津波によって、現実から奪い去られようとしていた。TVを見ながら、右手の人差し指が勝手に震えた。
当時の僕には、仕事以外にもう一つ取り組んでいることがあった。それは、Tokyo Otaku ModeのFacebookページの立ち上げだ。つまり、アニメや漫画に代表されるオタクコンテンツを世界に発信することだ。
日本のコンテンツの現状をどうにかしたいという思いと、日本にいるアドバンテージを活かし、Facebookを通じて日本国外に届けるコンテンツとして、オタクコンテンツが適していると考え、仲間とともにTokyo Otaku Modeの構想を練っていた。そして3月下旬を目標にFacebookページの立ち上げを計画し、着々と準備を進めていた。だがそんなときに震災を受け、一度は立ち上げ延期を考えた。
日本国内のTVや新聞では、震災について日々悲惨なニュースが伝えられた。海外の報道でも、日本に対する悲観的なコメントを目にした。インターネット上でも、「あの漫画家が地震で亡くなった」なんて誤った情報が飛び交っていた。日本の現状が正しく伝わっていなかった。
僕は、仲間ともう一度話し合った。自分たちに何ができるのか。何をやるべきなのか。そして、延期しようと考えたFacebookページの立ち上げを、「今だからこそやろう」と決断した。日本のアニメも漫画も、今までと同じように楽しめることを、世界中の人々へ早く伝えたかった。
こうした想いとともに、使命にも似た強い意志が芽生えたのを今でも覚えている。そして震災から2週間後の3月24日、仲間と一緒にTokyo Otaku ModeのFacebookページを立ち上げた。

Tokyo Otaku Mode:路上でプレゼンテーション。
そしてシリコンバレーへ
Tokyo Otaku Modeは、僕を含めた数名のメンバーを中心にスタートした。今でも、彼らが創業メンバーとして活躍している。
始めは、Facebook上で日本のサブカルチャーにまつわるコンテンツを紹介することからスタートした。今振り返ると、個人が趣味で作ったような、ささやかなものだ。最初はなかなかファンが集まらず苦労した時期もあった。それでも、試行錯誤を重ね、オタク系イベントに行って撮ったコスプレイヤーの写真や日本発のサブカルチャー情報を根気よく更新し続けると、ファンの数は徐々に増え、数百万人規模にまで膨れ上がった。このサービスは世界中の人々のためになる、と信じ続けたのが功を奏した。
ただ、ファン数は増え続けていたが、僕はまだ会社員だったし、他のメンバーも別の仕事を抱えていた。ファン数が数百万規模に達したTokyo Otaku Modeは、その時点でもまだ仕事の合間や休日に行なうクラブ活動のようなものだった。そんな中、ある出会いが訪れる。2012年2月の冬、設立間もない企業などへ積極的に投資を行なう小額出資ファンド「500スタートアップス」代表のデイブ・マクルーアに会う機会を得て、渋谷の路上でプレゼンテーションをするという出来事が起きた。僕らはとにかく必死でTokyo Otaku Modeについて説明した。プレゼンを聞き終えてから、デイブは「シリコンバレーに来い」と勧めてくれた。それはつまり、「投資する」ということだった。

僕は、働いている会社をすぐに辞め、アメリカに渡った。そうして一緒にアメリカに来た仲間とともに、2012年4月10日、東北から1万km近く離れたシリコンバレーでTokyo Otaku Modeを法人化して正式に創業した。僕がTVで震災の映像を初めて見た日から、396日後のことだ。
ファンとクリエイター、
双方のニーズを満たす場所・サービスを
Tokyo Otaku Modeを法人化する前(2010年頃から)、海外の市場経済を知るべく、自費で上海やベトナム、フィリピン、サンフランシスコへ企業視察に行ったことがある。とにかく色んなものを見て回った。その一環として、日本のどんなコンテンツ・サービスが人気があるのかチェックしたり、現地の人に話を聞いたりした。そんななか、ひとつ気になることがあった。それは海賊版のアニメ・漫画の流通だ。
地域の異なるそれぞれの国で、どこから出てきたのか分からない海賊版が、同じように横行していた。なかには正規品ではないと分かっていながら購入していく人もいる......。知らないところで、慣れ親しんだアニメや漫画が姿形を変えて売買が行なわれていた。
海賊版の存在は、今まで耳にはしていたけれども、作品が持つ本来の価値や権利を失って海外の人々に提供されている現実に愕然とした。だがその一方、たとえそれが海賊版であるにせよ、現地の人が自国のコンテンツより日本のコンテンツを手にしてくれることに驚いた。
海賊版は、正規品のコピーだ。違法コピーしたソフトウェアやコンテンツであり、作品制作者の権利をないがしろにして、販売やWeb公開が行なわれることもある。
日本語をベースに制作されることが多い日本のアニメ・漫画を海外で流通するためには、言葉の翻訳を避けて通れない。海賊版は、制作者の意図を正しく翻訳できているのだろうか?全10巻の漫画のうち、「7巻がどこに行っても見つからない!」なんてこともあるだろう。それでも7巻を飛ばして読みきってしまう。それは、ファンが作品に対する理解を深められず、「面白くない」とガッカリして、アニメ・漫画への興味を失うきっかけになるかもしれない。海外視察を重ねる度に僕は、海賊版に対する複雑な気持ちを強めるようになった。
今これを読んでくれている皆は、日本のアニメや漫画を愛し、「これから先もずっと楽しみたい」と願ってくれていると思う。 もしそうなら、彼らクリエイターが正当な評価を得て創作を続けることに、理解を示してくれると嬉しい。
作品に出会いたいファン、より良い作品を作りたいクリエイター。海外視察を通じて、「コンテンツをより正しい形で提供できればもっと多くの人がハッピーになるのでは?」という問いが浮かんだ。そして今、Tokyo Otaku Modeは、その問いに対する僕らなりの答えだ。両者のニーズを満たす場所を、世界規模で作り出そうと試みている。国や地域の経済状況・治安問題、特有の事情に縛られない場所として。世界中のアニメファン、漫画ファンが楽しめる場所として。
そうして、制作費100万ドルのアニメコンテンツが、僕らのサービスを通じて200万ドル、300万ドルと売上を上げるコンテンツになるようにしたい(ちなみに日本には、ディープなオタクコンテンツがたくさんある。それらを皆に紹介するのも、Tokyo Otaku Modeの使命だと感じている)。紹介した作品が世界中で認知され、関連商品もどんどん売れる。モノや作品が、国・エリアを問わずタイムリーに提供され、クリエイターやメーカーに利益が還元される。そんな風になれば、制作に関わった全ての人々にポジティブな影響が生まれ、質の高いエンターテイメントが作り出され続けると信じている。
Tokyo Otaku Modeの人々

Tokyo Otaku Modeのサービス運営にかかわる人々は、創業メンバーの人脈を中心に声をかけて集めた。
このウェブサイトの運営の生命線とも言えるプログラマーやデザイナーだけではなく、クリエイターをサポートするメンバー、Shopの運営メンバー、カメラマン、編集者。とにかく色んなジャンルの人間が集まってこのサイトを構成している。世界中の人々にオタクコンテンツを発信するために、そしてクリエイターが創作に没頭できる環境を作るために。
ちなみに僕らは、イラストレーターやコスプレイヤー、ボーカロイドプロデューサー、漫画家などクリエイティブな作品を作って人を楽しませるスキルを持つ人々を総称して、「クリエイター」と呼んでいる。クリエイターたちにはとことん作品作りに没頭してもらいたい。時に彼らは、海の底みたいな創作の世界へもぐりこむこともある。潜り込んで周囲の声が届かないほど集中して、誰にも見えない世界を誰にでも見える形に具現化する。そんな風に作品を形にしていくには並々ならぬ努力と時間が必要だ。
しかし若きクリエイターの多くは、才能があってもなかなかお金に結びつけられない。メーカーや企業の協力を受けたり作品の販売ルートを確立したりしなければ、創作だけで生活するのは難しい。日々の生活のために、別の仕事をしなければならない。つまり、創作の時間を削らざるをえない。
創作したくても現実が許さない。過去に、多くのクリエイターがそんなジレンマを抱えただろう。努力する時間さえあれば開花したかもしれない才能なのに。
だから僕らは、彼らのサポートに力を注いでいる。具体的には、作品を公開する場の提供や彼らのメッセージの翻訳による情報発信や、商品の世界発送を行ない彼らへの利益還元を試みている。また、作品のポスターやTシャツなどオリジナル製品の商品開発も、協力して多数やっている。
作品を通じて利益を得る。そうして彼らが創作に没頭する時間を増やせるようになれば、より良いものを生み出す可能性が高まるはずだと信じている。
そして、そうした才能あるクリエイターが創り出す素晴らしい作品を世界中のみんなにもっともっと知ってもらいたい。
どう、それってワクワクしない? どんな新しいものが生まれるのか、そしてどんな未来が待っているのか。「この作品と出会えて良かった」と思えるものに僕は巡り会いたいし、それを世界中の皆とシェアして喜びを分かち合いたい。
それが僕らTokyo Otaku Modeのメンバー全員の想いだ。
Tokyo Otaku Modeのミッション:世界を1ミリ変える
地球の直径は12,742kmだという。途中でヒマラヤ山脈やアフリカのグレート・リフト・バレーを通過すればまた話は別だが。僕らは、そんな広大な地球のどこかに住む誰かの世界を、1ミリ変えるきっかけを作りたいと思っている。それは少なくない数の人が思うことかもしれない。芸術、サービス、宗教、愛。人や企業が、様々な想いを他者へ伝えようとするだろう。
僕らは、アニメやマンガなどサブカルチャーに夢中になる人は、それら作品や商品を楽しむとき平和な心地になることを知っている。人は、楽しみながら落ち込むことは難しい。愉快で笑っているときに悲しくて泣くことも難しい。だからこそ、物事を心底楽しもうとするオタクの姿勢は、世界により多くの平和を作り出すきっかけにすらなるかもしれない。だから僕らTokyo Otaku Modeはその可能性を信じ、オタク文化の認知度や価値観の向上を通じて世界を良い方向へ変えていきたい。
より具体的なミッションは、日本を中心としたオタクコンテンツを世界中へ届けることだ。いいかえれば、あらゆるオタクの価値観を受け入れ、そして一人一人がオタクとしての喜びを噛み締められる場所や機会を設けること。
もう一つのミッションは、才能あるクリエイターを発掘・支援し、継続的なクリエイションを実現できるエコシステムを構築すること。おおげさに言えば、新しいアート文化の構築、ひいてはオタク文化の地位向上を図ることだ。
僕らはただ、色んな事物を世界中の人々へ伝えていく。その評価は受け手に任せる。僕らは自分たちの価値観を一方的に押し付けるつもりはない。なぜなら、世界を変えるのはオタクの皆であり、僕らはそのきっかけを作るに過ぎないからだ。
Tokyo Otaku Mode Shop
最後に、Tokyo Otaku Mode Shopについて話をしたい。

Tokyo Otaku Mode Shopを始めようという考えは、Tokyo Otaku Modeのミッションや、僕自身の体験を通じて生まれた。「評価されるべき人・モノ・作品が正しく評価される環境を」 「ファンとクリエイター、双方がハッピーになるように」。そんな想いの延長線上に、情報発信や作品公開のみならず、日本発の正規商品を世界中のファンに届けるだけでなく、クリエイターの作品を商品という形でファンの手元に届けることができるShopサービスを行なう考えが芽生えたのだ。
僕らが今Tokyo Otaku Mode Shopで販売している商品は、正規のルートを通じて仕入れているものだ。一つ一つ地道に商品の販売許諾をもらって、日本国外の皆に提供している。
やっていることは、今までと変わらない。Galleryページにおけるクリエイターさんの作品紹介、Newsページにおけるオタク情報の配信。Shopページでやっていることは、それらと同じで、日本を中心としたオタクコンテンツを世界中の皆に伝えること。それをより現実的な形で、手に取って触ったり、間近にキャンバスボードやポスターを飾ってもらったりして、ありありとその良さを実感してもらうこと。それが僕らのShopサービスにおける願いの一つだ。もし君の気に入るものが僕たちのShop内にあったら嬉しい。
見つからないときは、僕らに問い合わせてほしい。100人のオタクがいたら100通りの好みが存在すると思っている。だから、世界中にいる皆がそれぞれどんなものを望んでいるのか、リクエストを伝えてほしい。そのリクエストを100%実現できるか分からないけど、できるかぎり望みを叶えられるよう努力する。
世界中の皆に、自分の望む商品が手元に届くのが待ちきれない気持ち、商品を手に取って心臓が高鳴るほど嬉しくなる瞬間を味わってほしい。これはオタクの一つの醍醐味だ。
作品しかり、情報しかり、商品しかり。僕たちTokyo Otaku Modeは、魅力的なオタクコンテンツを、地球上の多くの国や地域の人々に楽しんでもらえるよう、日々提供し続ける。世界がより良い方向へ進むように。そう、1ミリでも。
最後まで読んでくれてありがとう。そして、ここまで一緒に助け合いながら成長してきたスタッフの皆に、この場を借りてありがとうと伝えたい。
